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添乗員日記 ツアコン奮闘記Ⅱ 大号泣の大宴会

ツアーコンダクター体験談

派遣添乗員20年の私が体験した、裏話、苦労話、他愛もないことから、とんでもないことまで、、ツアーに起こるハプニングなど綴っています!

大号泣の大宴会

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喜怒哀楽の人間模様

添乗員という仕事をしていると、

喜怒哀楽様々な人間模様に触れることがあります。

プライベートなお客さんと目の前で接することで

ほかの仕事では味わえない

感動や感情、喜びに触れるのです。

転職してもまた添乗員の仕事に戻ってくる人がいるのも

この点にあるのではないかと思います。

 

もちろん「楽しい!」に触れる機会がもっとも多いのですが、

ときおり、涙するような感動に出会うことがあります。

長い添乗人生の中で、

団体の参加者全員が大号泣するという、

一体感のf感動を味わった体験がふたつあります。

感動の体験

ひとつは、、

バス旅行の帰り道、渋滞の中で

映画「タイタニック」を見て、、

映画終了と同時にサービスエリアについたとき、、、

タイタニックの感動と、長時間のバスからの解放

なにより我慢していたトイレへ行けるという安心感から

バスを降りてくるみんなが大号泣、、、

いまは楽しい思い出ですが、、。

堂ヶ島温泉へのバスツアー

もうひとつは、私がこの仕事を続けるきっかけにもなり、

もっとも感動した添乗の一つです。

私が添乗員をはじめて2年目くらいでしょうか

伊豆の堂ヶ島温泉へ行くバスツアーへ添乗したときです

バスはほぼ満車、、お客さんは36名

今では考えられないような大人数での

募集旅行でした。

昼間は、沼津でお寿司を食べて

御用邸をみたり、お花を見たり、

大人数の上に、ガイドさんも楽しい方で

バスの中は終始笑い声があふれる

楽しい雰囲気のツアーでした。

ツアーに参加したことのある方なら

分かると思いますが、

バスの座席は、添乗員が最前列の

運転手さん後ろ、またはドアの後ろの2席を

使うことが多く、

通路を挟んで反対の最前列には、

申込の早い方か、とても酔いやすい方が

乗っています。

最前列のふたり

この日最前列に載っていたのは、

女性二人組のAさんと、Sさん、

今回のツアーに申込が最も早かったふたりでした。

年齢は50歳前後、、

ふたりはお友達同士のようでした。

ただ、ふたりはバスの中でも

あまり話をすることはなく、

とくにAさんは寡黙で、、

私やガイドさんの話を、あまり反応なく聞いていました。

まれに、ご夫婦で参加される方で、

バスの中でまったく会話をされない方はいます(笑)…

ですが、お友達同士でまったく会話しないのは珍しい、、

でも、おとなしいおふたりなんだと思い、

あまり話しかけずに、旅行を楽しんでもらおうと

考えていました。

ホテルへ到着

天気も良く、1日目はまったく問題なくホテルへ到着。

夕日がきれいと有名な西伊豆の堂ヶ島温泉、

到着時にはちょうど海に夕日が沈むところで、、

ホテルからサンセットドリンクがふるまわれました。

海にしずんでいく大きな太陽…真っ赤にそまる空…

感動的です。

私は、夕日が沈むのを見届けると、お客さんをお部屋へご案内し、

フロントでの手続きを済ませ、そのまま宴会場へ、、、。

今では珍しいですが、

まったく見ず知らずの寄せ集めの募集旅行でも

当時は夕食を宴会場で食べることが多く、

乾杯をしてスタートし、

途中カラオケなども楽しんでもらい、

最後は締めまで行うというのが、

あたりまえでした。

当然見ず知らずの皆さんはいきなりカラオケなど

してくれないので、

まずは添乗員が歌ったり、

誰かをデュエットに誘ったり

歌の好きそうな人を昼間に探しておいたり、、、

いま考えると添乗員の仕事も多かったですね…

宴会場での夕食がスタート

17:30にふたたび宴会場へ向かい

カラオケの調子などを確認すると、

早い方は宴会場にやってきました。

先に到着した方とは、昼間の観光の話や

それぞれの日々のお話などを聞きながら、

全員揃うまでお待ちいただきました。

結局全員揃ったのは18時…

みんなで乾杯して宴会スタート…。

「カラオケの用意もあるので、好きな方はぜひ歌って下さい!」

マイクを通して「好きな方はぜひ歌って下さい!」

と言ったところで、

「ハイ!私歌います!」というツワモノはなかなかおらず、、

この日も、飲み物を運んだりしながら、

1人ずつ口説いていきました。

「カラオケ、一番で歌ってもらえませんか?」

「4名グループはみなさんだけなので、ぜひ全員で舞台で歌ってください」

「今日はせっかくの機会ですから、ご夫婦ご一緒に歌いましょう!」

「いかがですか、もしよろしければ、私とデュエットしていただけませんか」

この日も、お食事の席を回り、、つぎつぎとカラオケの曲を決めていきます。

宴会がスタートして、30分ごろには、

「歌うよ」と言っていただいた方が、

6組ほど…

「これだけあれば、6組が歌っている間に、

他の方も歌いたくなり、自然と曲が入っていくな…」

と思い、カラオケ大会をスタートすることにしました。

1曲、、2曲、、3曲、、、

36人もいると、自然と盛り上がり、、、

歌っている皆さんも、聞いている皆さんもとても楽しそう。

「私も歌ってよいですか…?」

「この曲を予約してください…」

など、カラオケの機械の近くには、頻繁にお客さんが

曲をもってくるようになりました。

1時間以上のカラオケ大会

結局1時間以上カラオケ大会は続き…

「だいたいどのグループも1曲は歌ってもらったかな…」

と思い、目の前の席を見ると、

バスで最前列にいた、Aさんと目があいました。

「おとなしめだし、、カラオケはやらないよな、、」

と思ったのですが、

AさんとSさんだけ声をかけないのも悪いと

「Aさん、よかったら一曲うたいませんか?」

すると、Aさんがおとなしい声で

「はい、歌います…」

すこし驚いたのですが、、

Aさんに曲を選んでもらい、機械に入力をしました。

 

歌も一巡したので、その後は新たな予約は入らず、、

そろそろ締めというところで、

あとはAさんを残すのみになってしまいました…

おとなしめなAさんがトリになり、

申し訳ないな…とも思ったのですが、

Aさんにお伝えすると、Aさんは、、

「歌い始めの前に皆さんへお伝えしたいことがあるので

時間いただいてもよいですか…」

「もちろんよいですよ、」といったものの、

いったい何をお話しするんだろう…と少し心配になりました。

Aさんの告白

Aさんの番を迎え、私はマイクで

「さあ、楽しんでもらえましたでしょうか、、

まだまだカラオケも続けたいところですが、、

お時間もありますので、次を最後の曲としたいと思います。

トリに歌っていただくのは、Aさんです!!」

と紹介。

すると私からマイクを渡されたAさんが話し始めました…

 

「みなさんに感謝をしたくて、マイクをいただきました。

〇〇から来ました、Aと申します。」

いったい何を話すんだろう…

せっかく楽しい雰囲気の宴会が、壊れなければよいが…

 

Aさんがゆっくり話し始めました…

「先月主人を亡くしました…

交通事故での突然の死でした、、、

ちょうどひと月になりますが、

気持ちがふさぎ込んでしまい、

家から一歩も出られず、何を食べてもおいしくなく、

なにも楽しくない日々が続き、、

正直死にたいと思っていました。

今日一緒にきている妹のSが

そんな私を心配して、無理やりこのツアーに申込み、

バスに乗せられました、、

はじめは、楽しい旅行をしている皆さんをみて

さらにつらくなりましたが、、、

みなさんの笑顔や、ガイドさんのお話し、

青い海や、先ほどの綺麗な夕景をみて、、

生きているって素晴らしいな…

生きる気力が少しわいてきた気がします…

そして宴会で、みなさんの楽しい歌声を聞いているうちに

変わらなきゃ…、生きることを楽しまないと…

と思いました。

きっと主人もそう言ってくれるんじゃないかと…

そう思って食べたら、お刺身がおいしい…

こんな私に

添乗員の○○さん(私)が歌を勧めてくれました、

新しい自分のきっかけになればと、、

歌わせていただいてもよいでしょうか…」

みんなからは大きな拍手が起こりました。

ふと周りをみると、、

宴会場にいる36名、、料理を運ぶ中居さんまでが

大号泣しながら拍手をしています。

 

昼間の様子や、Sさんとの雰囲気、、

すべてが合致し、お話を聞いているうちに

私も涙があふれてきました…

 

曲のイントロがかかり、、

Aさんはしっとりした声で、

フランク永井さんの「おまえに」を

歌いあげました…、、

それまで聞いたことのない曲でしたが、

歌詞の「そばにいてくれる だけでいい、、、」

がたまらなく胸に響きました…。

大号泣と拍手喝采

歌い終わると、、Aさんは

「楽しい旅行、宴会をこんなしんみりさせてしまって

すみません…、、でもほんとに生きる力になりました

みなさんありがとうございます」

みんなからは、応援する声や、

嗚咽にもにた涙の音、、

 

いままで体験したことのない一体感と

感動をした私は、

何か締めを…と、

宴会終わりの挨拶に加え、

「Aさんの新たなる門出と、ここにいるみなさんの幸せを祈って、

三本締めをしましょう!」

と思わずマイクで発していました。

私の音頭で

三本締めの大きな音が宴会場に鳴り響き、

大宴会の締めとなりました。

宴会場から部屋へ向かうみなさんは、

目が真っ赤、、まだ泣いてる人もいて、

皆が口々に、、

「こんなに感動した宴会は初めてです」

と言いながら部屋へ戻っていきました。

 

翌日、、

バスを降りる際も、みんなが

「Aさん、がんばりましょうね!」

「元気だして下さい」

「昨日の歌感動しました…」

などそれぞれが涙しながら、握手して降りていきました。

 

そしてAさんと、妹のSさんが降りる際、

Aさんから固く握手され、

なんどもお礼を言われました。

妹のSさんも号泣しながら、

わたしになんどもありがとう、と。

 

その後AさんSさんとやりとりはしていませんが、、

きっと今もお元気で暮らしていると信じています。

私自身も生きる力をいただいた、、

なによりも、わすれることのできない最も感動した添乗となりました。

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